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石孫本店が昔ながらを保てている理由 その4

石孫本店

10年少し前の雑誌の取材。これが転機だったそうです。それまでは、「人が担いで運ぶのではなくて、機械の力で送れたらいいね。早くそんな風にしたいねって、よく話していたんですよ。」と、昔ながらの道具に囲まれていることに卑屈にも感じていたとか・・・ところが、全国を渡り歩いていたその雑誌のライターさんとカメラマンさんが、「こんな光景は見たことがない。絶対に残すべきだ!」と必死に訴えてくれたそうなのです。

「私たちにとっては目からうろこ。自分たちを否定しなくていいんだ。このままでいいんだって、頭の中を切り替えることができたのです。」当時使っていた原料も中国産から国産に切り替えて、建物や道具の修繕をはじめたそうです。「毎年少しづつですけど。ただ、今では守ることが大切な仕事の一つになっているんです。」大切に使う以上に、使われ続けている状態で残すんだという意志がこもっているような、そんな感じがするのです。

石孫本店が昔ながらを保てている理由 その3

石孫本店

写真の箱を通して小麦が炒り機に送られます。「これもずいぶん年季が入っているでしょ!」「いや〜すごいですねぇ!初めて見ました。」これまでに、そんな会話を何度繰り返したことか・・・そして、麦を炒るのは石炭。他の業界含めて石炭を使っているなんてとても稀。使う人が少ないものを調達するのは大変なはずなのに、いたって普通に使われています。また、麹を繁殖させる室の温度調節も、木炭で熱して窓を開けて冷ますシンプルな仕組み。

「木炭の熱と光が柔らかくていいんですよねぇ〜!ここで火を付けて藁をかぶせて室に運ぶんですよ。」と身振り手振りで説明してくれる。「この木炭を焼いてくださる方がいるんです。」結構なご高齢な方のようで、最近は全量が間に合わないからちょっと待っててと分割で納めてくれているらしい。もっと安い木炭はいくらでもあるはずですが、石孫本店さんの答えは、「せっかく焼いてくださるから、その方にお願いできるうちはお願いしようと思っているんです。」

石孫本店が昔ながらを保てている理由 その4

石孫本店が昔ながらを保てている理由 その2

石孫本店

生産の規模が大きくなるほど分業化していくもの。ただ、機械がない石孫本店にとっては自分の関わりが品質に直接影響して、それを実感するそうです。例えば小さな失敗があったとすると、「ほらみろ!だから・・・あそこが・・・お前が・・・」スタッフの方同志であれこれ話し合っているそうです。はたまた、休憩時間にスタッフがそら豆で味噌を仕込んでいたり、ストーブに鍋がかかっていて何かがつくられていたり・・・これが日常なんだそうです。

こんな積み重ねが、「自分が醤油や味噌づくりにどう関わるのが良いのか?」を考えて実感するきっかけになっているのだと思います。仕込み場は徹底的に清潔にした方がいいことを感じているから、自然とそうなっている気がします。「掃除をしっかり!」というやらされ感では決してできない環境だと思うのです。しかも、高圧洗浄機などは使わずに雑巾がけ。そして、あくまでどんな風に掃除してとは指示しないそうで、自分たちで相談してやっているそうです。

石孫本店が昔ながらを保てている理由 その3

石孫本店が昔ながらを保てている理由 その1

石孫本店

「スタッフに20代が二人もいるんですよ!」と嬉しそうに話してくださる石川社長。ここ石孫本店は醤油と味噌の蔵元として「昔ながら」という言葉がぴったり。同業者が訪れても「よく今だにこんな造りをしているものだ・・・」と舌を巻くほど。麹づくりを麹蓋で行っているところは全国で数件しかないし、小麦を石炭で炒っているのもほとんど聞いたことがありません。ただ、古い蔵にありがちな嫌な匂いなども全くなく、とっても綺麗なのです。

スタッフの方に対して、具体的な指示は出さないそうです。むしろ、「仕込はいつからするの?」と石川社長が聞くくらいだそうで、「資材が少ないので発注しておいてください!」と言われて発注する。「これが私の仕事なんです!」と、これまた嬉しそうに語ってくれる。「仕事をすることは生活の糧だけど、喜びの心がないといけない。そうしないと寂しいでしょ?!」決してうわべで語っていない。優しさと意志を話しているとヒシヒシと感じてしまうのです・・・つづく

石孫本店が昔ながらを保てている理由 その2
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