イチビキさんを訪問

愛知県豊橋市のイチビキさんを訪問させていただきました。

イチビキ

「創業当時の建物も何も残っていないけど、理念とおいしいものをつくる姿勢は残っています。それと、研究開発の歴史の積み重ねである菌も・・・」と中村光一郎社長。1772年に愛知県豊川市で醤油づくりをはじめ、大津屋からイチビキに社名変更し現在に至ります。愛知県でお馴染みの溜醤油や豆味噌をはじめ、煮豆など多様なラインナップを手掛けていて、醤油業界ではキッコーマンやヤマサなどの5大メーカーに次ぐ準大手に位置します。

イチビキ

ちなみに「イチビキ」の由来は明治末から大正時代の大豆の買い付け時の印からだそうです。大豆の品質に応じて良品に印を付けて、粗悪品と区別をしていたそうで、大津屋(当時のイチビキ)の荷印が一本棒。そこから「一引き」と呼ばれていたそうです。

イチビキ

普段、私が訪問しているメーカーに比べるととても大きな規模で、原料を保管するサイロが100トンの規模のものが5本ありますと説明を受けると「おぉ〜。すごい」と圧倒されてしまいます。ただ、大きいからこそ優れているポイントを十分に感じることができる時間になりました。

イチビキ

研究開発部の西村さんにもたくさんのお話を伺いましたが、説明内容が本当に素晴らしかったです。当然、社外に話せない内容もたくさんあるはずだと思いますが、話してよいこととダメなことのラインをわきまえていらっしゃり、こちらの質問にもイヤな顔せずできる限り解説をしてくれました。

麹菌、乳酸菌、酵母菌を自社培養している話、そして、味噌の乳酸菌を抽出して商品化しているなど研究開発の体制が確立されていて、その技術が醤油をはじめとする製品づくりにも活かされているという印象を受けました。それは小規模のメーカーでは持つことができないレベルの研究であって、さらに大きなメーカーと比べると機動力もあるようで、個々の担当の方の自由度が広く、製品にどんどん活用している活気のようなものが満ちていました。

イチビキ

溜醤油や豆味噌の生産者は「発酵していない」という表現をつかいます。濃口醤油などは麹菌、乳酸菌、酵母菌などの微生物が活躍して、つまり、発酵が欠かせないのですが、溜醤油は麹がつくる酵素による分解作用がメインで、例えば酵母菌による酵母発酵はほとんどないというわけです。ただ、イチビキさんの溜醤油は発酵させているといいます。そのままだと発酵しないので、いろいろな工夫を施しているそうで、このあたりも大量に溜醤を手掛けるメーカーならではだと思います。

→ ヤマサちくわさんを訪問

利き醤油の会in神楽坂プリュス

2017年5月27日 利き醤油の会in神楽坂プリュス、終了しました。6種類の醤油のラベルを目隠しした状態で味見をしていただき、直感的に好きなもの、苦手なものを選んでいただきました。

神楽坂で利き醤油

商品名は隠れているので、A〜Fの記号を割り振った醤油に対して、好きなものに手をあげていただくと、一つの銘柄に人気が集中することなく、みなさんの好みは分かれます。

神楽坂で利き醤油

その後に、隠していたラベルを発表して、それぞれの醤油の種類の解説に。参加者の方の興味度合いがとての高く、質問をいただく内容が高度でマニアック。桶による発酵の違いや、麹菌に関すること、さらには種麹の違いや大手メーカーさんの研究開発に関することなど。するどい質問をいただくと、答えるのも楽しいものです。

神楽坂で利き醤油

そして、当日のイベント開始30分ほど前にお電話をいただきTBSラジオの取材に来ていただきました。生放送でその日に開催されているイベントに突撃するというもので、参加者の方も快く迎えてくださいました。TBSの小林アナウンサーが登場。

また、数か月後になると思いますが、次回も開催したいと思います。

京都大学の松井三郎先生の乳酸菌の話

「F-DESIGN FORUM 2017 SPRING」の記録の2つ目。

京都大学の松井三郎先生の乳酸菌の話。ヨーグルトとかでも耳にして醤油づくりに欠かせない微生物の一つですが、もっと身近な自分の体の中にびっしりと住み込んでくれていることを教えていただきました。

腸内細菌は3つに分けることができて、善玉菌:悪玉菌:日和見菌=2:1:7の割合で存在。人にとってプラスの働きをするのが善玉菌、マイナスの働きをするのが悪玉菌。そして、善玉菌にも悪玉菌にもなるのが日和見菌。善玉と悪玉がバランスととりながら生存しているので、つねに善玉が優位になる状況をつくるのが大切。

そして、人のうんち。消化できなかったものがほとんどかと思っていたら、未消化物質は1/3ほど。残りの1/3が剥離小腸細胞、1/3が腸内細菌。半分以上が小腸の細胞と乳酸菌でした。それほど多くの乳酸菌が腸の中にびっしりと住み着いてくれていて、小腸の細胞も新陳代謝を繰り返しているというわけで、常に新しくなっているから小腸ガンって聞いた事ないでしょ?!といわれて納得。

奥田シェフの講演

2017年5月16日。福島屋の福島会長が推進する「F-DESIGN FORUM 2017 SPRING」が開催され、アル・ケッチャーノの奥田シェフの講演がとても印象的でした。「料理人は自己主張すると売れないんですよ。みんなが求めていることをする。これにつきるわけですよね」と、スタートから笑いをとりつつ淡々と話をすすめる奥田シェフ。

この「みんなが求めていること」をキャッチするのが難しいと思うのですが、アル・ケッチャーノをオープンした2000年、日本の野菜は味がなくて、外国のものがよいとされていたそうです。そんなことないだろう、探せばあるはず!と、農家を訪問し、生産者の顔が見えるメニューを提供。今までは市場に出していたから直接売れないと言われれば、じゃあ、物々交換でどうだと、店で仕入れた肉と野菜を交換したり・・・。農家さんも喜んでくれて、「これもおまけに」ってもらった野菜で、また新たな一皿ができたりしたそうです。

応援したい農家さんがいれば、料理を作ったり、加工品をプロデュースしたり。報酬はいらないから出来上がった加工品を安く仕入れさせてねって。結果的に報酬もらうより売り上げの金額が大きくなるんですよねと笑っていました。地元の鶴岡を「食の都」にしようと、自分は何をして、行政は何をして・・・と紙に書いていったそうです。そして、今では世界から注目を集める都市になっています。

「魂に火がついて」とご本人は表現されていましたが、自分の周囲におせっかいを焼きまくって、とてつもなくよい循環を生み出されている方。こんな印象を受けて、職人醤油も、こうありたいと思いつつ、まだまだだなぁと感じていました。

醤油とビンとペットボトル

以前、とてもお世話になっていたビンの問屋さんから久々の電話。ビンをメインで扱っていたけどプラスチックタイプを扱うかどうかを検討していて、どうかなぁ・・・というものでした。地方の蔵元さんだと一升瓶を使っているところもまだあります。回収されたビンが山積みになっていたりして、その光景も圧巻です。

ただ、回収したビンを再利用するために洗浄乾燥する必要があり、その設備と人件費がかかります。一方で、「ビンは重いよ」という消費者からの声。一升瓶サイズは継続するけどペットボトルに切り替えたよという声も耳にします。

また、昔は一升瓶で6本とか10本とか配達していたけど、今ではとても・・・。という声も。3世代が一つ屋根の下にいておばあちゃんが煮物をして、3食お米を食べてとなれば醤油の消費量も増えるのでしょうが、今はそのような状況ではありません。ビンのペットボトル化と小容量化が進んでいると思います。

そして、小型化するとここではビンが継続して使われていくとも感じています。
賞味期限の設定については容器毎に異なっており、ペットボトルの場合は1年半で、ビンの場合は2年(濃口醤油の場合)。醤油の品質という観点からするとビンの方が優れているということと、ペットボトルとビンだと見た目もビンの方がきれいに見えます。このような理由から小容量についてはペットボトルよりもビンを多くの蔵元は選択しているように感じます。ここに大手メーカーさんの空気を遮断する新容器が登場しているというのが現状ではないかと、そのような話をしていました。