埼玉県の笛木醤油さん

笛木醤油

笛木正司さんの、このがっしりした体格はなんなんだ?!と思わずにはいられない。2006年に家業に戻ってくる前にサッカーで鍛え、その延長線上の海外留学が大きな転機であったとか。その地でたまたま売られていた自社商品を見て友人は言う。「これはお前の実家のものか?!お前のミッションだぞ。これは。」そして、戻ってきて感じたのはスタッフの愛社精神。製麹を自分の子供のように扱っているのが印象的だったとか。

自分たちでできることはしようと笛木醤油が取り組んできたのは機械化の逆。そして、何にでも挑戦してきた。醤油を主にスイーツや加工品。ゼリーもした。ここには、伝統を引き継ぐということは挑戦するという風土がある。先代が残してくれた分析装置で、原料の大豆の段階から数値分析を行う。段階的に行っていて、醤油を搾るタイミングも数値で判断する。次は何に挑戦していくのか、かなり楽しみ。

店舗だけど製造許可書が

弓削多醤油川越

埼玉県の弓削多醤油さんといえば仕込み蔵に併設されている「醤遊王国」。醤油づくりの見学から醤油ソフトクリームまで、醤油のことなら何でもお任せといった施設。その弓削多醤油さんが川越に出店されたお店の中心にどーんと構えるのは圧搾機。天秤棒をつかって自由に力をかけて醤油が搾れる。そして、そのまま味わうことが出来る。さすが、弓削多さん。こう来たか!という感じなのですが、これを実現するのって簡単ではないのです。

ものをつくって販売をするには色々なルールがあります。製造許可書や保健所のチェック、商品に貼る表示ラベルに関するものだったり。色々感じることはあるけど、ルールの中で何ができるかを考えないといけないもの。醤油を搾る行為は製造。だから、ここは店舗でありながら製造許可が必要。そして、製造許可を取るためには開放されている空間ではダメなので、ガラスや透明アクリルで区切られている。それを踏まえて店舗を見ると、なかなかに面白い。

微生物とバランスと

微生物とバランス

「麹をつくっている時には納豆を食べてはいけない。そう言われますよね?!」と、栄醤油醸造の深谷社長が見学者に方に説明をしている。「私は個人的にあまり好きではないので食べないですけどね。ただ、必ずしもそうではないんですよ・・・」。麹菌がしっかりと繁殖しきった後であれば、納豆菌はその隙間に入っていくことはできない。だから、麹菌が繁殖する前は注意しないといけないけど、その後は大丈夫というわけ。

最近は何でも除菌除菌というけど、様々な微生物がバランスをとっている状態が自然な状態。悪い菌をなくそうと除菌すると思うけど、それ以外の菌もなくしてしまって、まっさらな状態になってしまう。そうなれば、悪い菌はより簡単に増殖できてしまうので本末転倒かもしれない。人が集まって組織をつくるときも、様々なタイプの人がいてバランスがとれるように、やっぱり何事もバランスなんだなぁと、蔵見学を傍目で見ながら。。。

南蔵商店に良之さんが



醤油蔵の息子さんが中学から高校生になると、実家が醤油屋ということが嫌になるそうです。出来れば隠したいし、早く東京に出ていきたい。ただ、いざ離れてみて気づいたとも言います。何もないと思っていた地元の良さだったり、父親の背中が実は偉大だったことなど。先日、南蔵商店さんにお若い方が・・・青木良之さん。冒頭の投げかけをすると、「もちろん嫌いな時期はありました。ただ、早くから戻ってきたいと考えていました!大学も農大の醸造科です。」若さが蔵を活性化させる。ますます楽しみです。

ヒゲタ醤油さん訪問

ヒゲタ醤油

ここまで話してくれるのか?と感じるほどに細かく丁寧な説明は、大手メーカーならではのデータや醸造学に基づいた工夫の数々。どんな投げかけにも的確に回答。それでいて「あっ、それは秘密です!」とニコリ。ここまでは外部に話してよくて、ここからはダメというラインを明確にもっているから、そのラインぎりぎりで対応してくれる。表面的でない説明にワクワクしっぱなし。大手は大手でやはりすごい!(写真は醸造グループの根本さんと服部さん)

弓削多醤油で桶診断

桶診断

ヤマロク醤油の山本さんが埼玉の弓削多醤油さんに。先日納品された新桶の様子を見つつ醤油談義に花が咲く。話題の一つが醤油屋は設備投資にお金がかかるよねというもの。大抵は、数十年は活躍する機械で、短期的にはよいものの、一度壊れてしまうと・・・さぁ、修理が大変。交換部品が世の中から姿を消してしまっていたり、営業担当も「実物見るのは初めてです」というケースもあったり。部品が特注になれば、コストは高額になる。

そして、現役で活躍している桶の診断がはじまる。わずかながら漏れのある桶。どこから漏れがあって、どんな対処をすべきか。ここに補強を加えておけば先々も大丈夫なはず。二人の議論は熱を帯びる。竹の箍がゆるくなってしまうことへの対処として太い鉄のワイヤーでの補強があるが、それなりの長さがあって醤油の塩分に耐えられてとなると、ホームセンターで売っている代物ではない。長期的に考えてベストな選択肢はどれか。まだ議論がはじまる。

桶日記2015(7)醤油屋が醤油屋に集まる

醤油屋が桶づくり

醤油屋が醤油屋に行って、けっこう深い話をする。ありそうで、なかなかない光景。ところが、桶づくりも終盤を迎える頃に醤油屋集団がぞくぞくと小豆島に上陸。それこそ関東から九州から日本各地から。すぐさま桶づくりに巻き込まれるものの、それを想定してみんな作業着持参。「毎日見ている箍だけど、編むのは初めてだ・・・」という方がほとんど。社長集団が同志になって、試行錯誤しつつチーム醤油屋で一本の箍が編みあがる。

休憩時間には桶講義。ヤマロク醤油の山本さん言う。「桶の基本構造を知っておけば、自社で補修できると思うんですよ。」桶の原理を理解すれば、漏れた時にどう対応すべきかをイメージできる。補修に使う部材も特注に近いので、個々がその都度手配するよりも共通の規格で共有すればいい。新桶をつくる技術を継承することと、今ある桶を出来るだけ長く使えるように管理すること。両方、大事。夜はもちろん大宴会。みなさん元気すぎます。

桶日記2015(6)ちょうどいいが難しい

箍

桶の周りを覆っている箍。竹で編んで円形にしたものを打ち込んでいくのですが、ポイントはその円周。桶ごとに大きさが微妙に異なるので、実寸値をその都度メジャーで計る。驚くのは円周5メートルに対して、1儖磴Δ箸呂泙蟆淡困全く違う。竹の太さや編み方であっという間に変わってしまう。一方で、水漏れがないように出来るだけギチギチに箍がきいていたほうがよいと、最初は思っていました。が、違いました。

箍をハンマーで打ち込むほどに、丸みのある綺麗なシルエットはなくなり、ぺちゃんと潰れて不格好になってしまう。長期的に考えると耐久性にも問題あり。やはり、きつすぎず、ゆるすぎずの「ちょうど」がいい。その加減を見極めるためには経験を積んだ体感値が必須。そして、その感覚を磨くためにも変動する要素は少ない方がいい。例えば、竹が常に均等な幅に割られている。やはり、地道で正確な下準備が欠かせないことを否が応でも実感するのです。

桶日記2015(5)竹の声を聞け

箍

箍(たが)を編む時の注意事項。1本を編むのに30分から40分かかるのですが、途中で「パキッ!」と音がすると全員が一瞬止まる。そして、青ざめる。竹が折れるとこれまでの作業が全て水の泡。最初からやり直しになってしまう。だから、絶対に折りたくないのです。そのためには竹の特性を理解する。竹の青い皮の部分を外側にして曲げていくとどこまでも曲がる。が、その面を内側にして曲げていくとあっさりと折れてしまう。この特性が全ての土台。

樽職人の原田氏はこういう。「ぼく自身、昔は力任せに竹を操ろうとしていました。けど、師匠に言われたんです。竹の声を聞けと。」ある程度竹を曲げていくと、こっちの方に曲がりたいという竹の特性を感じるので、その方向に誘ってあげるだけでいい。確かに、職人が竹捌きはビニールのひもを扱っているように見えますが、素人には鉄帯のように感じる。その違いは力づくで操っていないからなんですね。実際に自分が出来るできないは別にして・・・

桶日記2015(4)木の切り方

桶の棚

びみょうな台形。写真は桶の板の断面。側板とよばれるもので、これを何枚も連ねて円ができる。円になるためには断面が台形になっていないといけなくて、少しずつカーブを描いていって円になる。そして、よくよく考えてみると、一枚の板でもこの台形は一定でない。完成した桶を横から見ると上部から下部にかけてしぼんでいる。上と下の円周が異なるわけで、同じ一枚の板でも上から下にかけて幅も断面の台形もびみょうに違う。本当にびみょうな差ですが・・・

そして、側板の幅は板によって異なる。木の赤身と白身の境界線が入っているのが「コウヅキ」とよばれるよい材。一本の木からとれる量が限られるので有効利用しないといけない。だから、側板は幅が狭いものや広いものが混在してしまう。それらを数枚組み合わせたものが「棚」(写真の状態)。そして、意外と知られていないのが桶には正面があるということ。一番見栄えのよい板材・竹の箍を意識的に一カ所に集中させているんです。