南蔵商店に良之さんが



醤油蔵の息子さんが中学から高校生になると、実家が醤油屋ということが嫌になるそうです。出来れば隠したいし、早く東京に出ていきたい。ただ、いざ離れてみて気づいたとも言います。何もないと思っていた地元の良さだったり、父親の背中が実は偉大だったことなど。先日、南蔵商店さんにお若い方が・・・青木良之さん。冒頭の投げかけをすると、「もちろん嫌いな時期はありました。ただ、早くから戻ってきたいと考えていました!大学も農大の醸造科です。」若さが蔵を活性化させる。ますます楽しみです。

ヒゲタ醤油さん訪問

ヒゲタ醤油

ここまで話してくれるのか?と感じるほどに細かく丁寧な説明は、大手メーカーならではのデータや醸造学に基づいた工夫の数々。どんな投げかけにも的確に回答。それでいて「あっ、それは秘密です!」とニコリ。ここまでは外部に話してよくて、ここからはダメというラインを明確にもっているから、そのラインぎりぎりで対応してくれる。表面的でない説明にワクワクしっぱなし。大手は大手でやはりすごい!(写真は醸造グループの根本さんと服部さん)

弓削多醤油で桶診断

桶診断

ヤマロク醤油の山本さんが埼玉の弓削多醤油さんに。先日納品された新桶の様子を見つつ醤油談義に花が咲く。話題の一つが醤油屋は設備投資にお金がかかるよねというもの。大抵は、数十年は活躍する機械で、短期的にはよいものの、一度壊れてしまうと・・・さぁ、修理が大変。交換部品が世の中から姿を消してしまっていたり、営業担当も「実物見るのは初めてです」というケースもあったり。部品が特注になれば、コストは高額になる。

そして、現役で活躍している桶の診断がはじまる。わずかながら漏れのある桶。どこから漏れがあって、どんな対処をすべきか。ここに補強を加えておけば先々も大丈夫なはず。二人の議論は熱を帯びる。竹の箍がゆるくなってしまうことへの対処として太い鉄のワイヤーでの補強があるが、それなりの長さがあって醤油の塩分に耐えられてとなると、ホームセンターで売っている代物ではない。長期的に考えてベストな選択肢はどれか。まだ議論がはじまる。

桶日記2015(7)醤油屋が醤油屋に集まる

醤油屋が桶づくり

醤油屋が醤油屋に行って、けっこう深い話をする。ありそうで、なかなかない光景。ところが、桶づくりも終盤を迎える頃に醤油屋集団がぞくぞくと小豆島に上陸。それこそ関東から九州から日本各地から。すぐさま桶づくりに巻き込まれるものの、それを想定してみんな作業着持参。「毎日見ている箍だけど、編むのは初めてだ・・・」という方がほとんど。社長集団が同志になって、試行錯誤しつつチーム醤油屋で一本の箍が編みあがる。

休憩時間には桶講義。ヤマロク醤油の山本さん言う。「桶の基本構造を知っておけば、自社で補修できると思うんですよ。」桶の原理を理解すれば、漏れた時にどう対応すべきかをイメージできる。補修に使う部材も特注に近いので、個々がその都度手配するよりも共通の規格で共有すればいい。新桶をつくる技術を継承することと、今ある桶を出来るだけ長く使えるように管理すること。両方、大事。夜はもちろん大宴会。みなさん元気すぎます。

桶日記2015(6)ちょうどいいが難しい

箍

桶の周りを覆っている箍。竹で編んで円形にしたものを打ち込んでいくのですが、ポイントはその円周。桶ごとに大きさが微妙に異なるので、実寸値をその都度メジャーで計る。驚くのは円周5メートルに対して、1儖磴Δ箸呂泙蟆淡困全く違う。竹の太さや編み方であっという間に変わってしまう。一方で、水漏れがないように出来るだけギチギチに箍がきいていたほうがよいと、最初は思っていました。が、違いました。

箍をハンマーで打ち込むほどに、丸みのある綺麗なシルエットはなくなり、ぺちゃんと潰れて不格好になってしまう。長期的に考えると耐久性にも問題あり。やはり、きつすぎず、ゆるすぎずの「ちょうど」がいい。その加減を見極めるためには経験を積んだ体感値が必須。そして、その感覚を磨くためにも変動する要素は少ない方がいい。例えば、竹が常に均等な幅に割られている。やはり、地道で正確な下準備が欠かせないことを否が応でも実感するのです。

桶日記2015(5)竹の声を聞け

箍

箍(たが)を編む時の注意事項。1本を編むのに30分から40分かかるのですが、途中で「パキッ!」と音がすると全員が一瞬止まる。そして、青ざめる。竹が折れるとこれまでの作業が全て水の泡。最初からやり直しになってしまう。だから、絶対に折りたくないのです。そのためには竹の特性を理解する。竹の青い皮の部分を外側にして曲げていくとどこまでも曲がる。が、その面を内側にして曲げていくとあっさりと折れてしまう。この特性が全ての土台。

樽職人の原田氏はこういう。「ぼく自身、昔は力任せに竹を操ろうとしていました。けど、師匠に言われたんです。竹の声を聞けと。」ある程度竹を曲げていくと、こっちの方に曲がりたいという竹の特性を感じるので、その方向に誘ってあげるだけでいい。確かに、職人が竹捌きはビニールのひもを扱っているように見えますが、素人には鉄帯のように感じる。その違いは力づくで操っていないからなんですね。実際に自分が出来るできないは別にして・・・

桶日記2015(4)木の切り方

桶の棚

びみょうな台形。写真は桶の板の断面。側板とよばれるもので、これを何枚も連ねて円ができる。円になるためには断面が台形になっていないといけなくて、少しずつカーブを描いていって円になる。そして、よくよく考えてみると、一枚の板でもこの台形は一定でない。完成した桶を横から見ると上部から下部にかけてしぼんでいる。上と下の円周が異なるわけで、同じ一枚の板でも上から下にかけて幅も断面の台形もびみょうに違う。本当にびみょうな差ですが・・・

そして、側板の幅は板によって異なる。木の赤身と白身の境界線が入っているのが「コウヅキ」とよばれるよい材。一本の木からとれる量が限られるので有効利用しないといけない。だから、側板は幅が狭いものや広いものが混在してしまう。それらを数枚組み合わせたものが「棚」(写真の状態)。そして、意外と知られていないのが桶には正面があるということ。一番見栄えのよい板材・竹の箍を意識的に一カ所に集中させているんです。

桶日記2015(3)徳島から樽屋がやってきた

司製樽

自称日本一若い樽職人。徳島県阿南市の司製樽の原田啓司。寡黙とは正反対でよくしゃべる。酒を飲むと一段と騒がしい。そして、風呂が長い。一週間ほど宿が一緒。風呂から出てくると一時間が過ぎている・・・だけど、その分まっすぐでアツいものを秘めている。いや、秘めていない。いつも開放しまくっている。そんな若き職人。今回の大桶サイズは初めてだというが、今回彼がもたらしたものは大きいと思う。

個人的な推測だけど、小型の樽のお客さんはずっと一般消費者で、大桶は醤油などの醸造業者。個人相手か企業相手か。桶職人に求められていたことも必要な技術も微妙に違っていたのかもしれない。だからこその視点で、「こうした方がいいのではないか?」感じたこと、考えたことをどんどんぶつける。原田氏の意見から議論が生まれる。威勢のいい若者が加わることで伝統産業が活性化していく。そんな縮図を見た気がした。そして、司製樽の「おひつ」がほしくなった。

司製樽
http://www.tsukasaseitaru.com/

桶日記2015(2)何事も素材が大切

桶づくり

木に節があるのは当たり前。桶材に使うと水漏れの原因になるので敬遠されがちだけど、節止め等で使えなくもない。一方で、無節の高価な木材を使う目的はそれだけではない。まず、節があると削りにくい。ミクロン単位の精度でカンナをかけていくと節が邪魔をする。歯がずれる。歯がかける。その度に調整しないといけない。板同士を組み合わせていくときも、節の都合で妥協せざるを得なかったり・・・節のおかげで作業が際限なく増えていく。

竹の場合は、まっすぐ伸びた節の間隔が広いものを探したい。ただ、その理想の竹は野生の中では育ちにくい。考えてみれば当たり前で、自然の竹林で歳をとった竹は倒れる。横の竹に寄り掛かられた竹は真っ直ぐには育たない。人が手を加えて間引きをしているから真っ直ぐ長くなり、昔はこの分野のプロがいた。よい素材を入手することが作業を効率化させて、よい品質に繋がる。そのためには素材の生育環境まで踏み込んでいく。

桶日記2015(1)ヤマロク醤油が桶をつくる

桶づくり

濃厚な小豆島での10日間。ヤマロク醤油さんの桶づくりに参加させていただきました。朝8時から暗くなるまでひたすら木を削る。急斜面の竹林から竹を運び上げる。15メートル級の竹はそのまま運べないので、その場で八つに割る。その竹を薄く削って編んでいく。手がひたすらに痛い。その編まれたものをハンマーでガンガン打ち込む。ゆる過ぎてもきつすぎてもだめ。「ちょうどよい」が一番だけど、その加減こそが難しいことを実感する。

最初に桶づくりに参加させていただいたのが2012年1月。その後、2013年9月に1本目の新桶を手掛けて、いよいよ今年。「今年は3本つくりますよ!」とヤマロク醤油の山本さん。意気揚々と伺うと4本作ることにしたと告げられる。「あいつはほんま無茶いいよる!」とすっかり桶職人になった小豆島の大工の坂口さん。到着した時点で1本目がほぼ完成間近。その時点からの10日間の出来事を10回にわたってレポートします。 つづく