角谷文治郎商店 その2

三河味醂

みりんの原料。もち米9に米麹1。そこに焼酎を5。焼酎も米からつくられるので米づくしというわけです。麹の力でもち米のデンプンを糖に変える。さらに、タンパク質もアミノ酸になるからうま味も加わる。昔は甘さがとても貴重だったので甘い酒として飲まれていたとか。そして、その高級酒を高級割烹が料理に使い始めて徐々に広まってきて調味料として使われるようになる・・・

みりんはお酒として区分されていたので酒税の対象。昭和30年で一升1,000円。そのうち税金が762円。大卒初任給が5−6,000円を考えるといかに高価で、そして、税金がいかに高かったか。その後、数年で税金が121円まで下がるのですが、一方で勤労者所得が増えるに伴って国策として米を守る方針になる。税金は下がるが米価は上がるので原料コストも上がる。そこで判断を迫られる。今までの原料と製法で味を優先するか、または、コーンスターチなど代用できる原料を取り入れてコストパフォーマンスを優先するか・・・

角谷文治郎商店 その1

角谷文治郎商店

三州三河味醂を手掛ける角谷社長のお話は、いつ聞いても面白い。面白いなんて表現するのは失礼だと思うのですが、角谷社長の言葉は深い奥行きがあって、いくらメモしても足りないくらい。今回は「情報ってツールですよね。」という話題からスタート。情報に何をのせるか?風土であり安全安心であり歴史であり文化なのだと。それが伝統産業。その中でも醸造は歴史の厚いものがある。角谷社長が発するから大きく頷くことができる。早くこの深みが欲しい。

続いては日本の醸造の共通点について。それは「ブレーキ」。微生物が暴走するのにブレーキをかけてあげているのが醸造。醸造品によってそのブレーキが異なるというわけ。醤油であれば塩分。高い塩分濃度で微生物が勢いよく動くのを抑えて、ゆっくりゆっくりの環境をつくっている。日本酒であれば温度。味醂であれば焼酎によるアルコール。横並びにさせて醸造を見てみるのも面白い。

小田商店(愛知県豊橋市)その3

小田商店

「100人に1人が気に入ってくれればいい。」と小田さんは話します。大手メーカーとは製法もスタンスも違うわけで、どっちが良い悪いではなく目指すべき方向が違うのだと思います。そして、出荷場には一斗缶が山積みに。業務用途で出荷されるこれらは、先方の担当者がこの溜を気に入ってわざわざ使っているのだと思います。ただ、小田商店の名前が前面に出ることなく、多くの方の口に運ばれているんだなぁと思うと、もっとスポットが当たるように頑張らねばと思うのです。

小田商店(愛知県豊橋市)その2

小田商店

小田商店の溜は5水仕込みと10水仕込み。麹の量に対して50%量の塩水で仕込むのが5水。(一般的な濃口醤油は12水〜13水程度)すると搾る工程が異なります。武豊町など溜の産地で一般的なのは、味噌に近い諸味を切って布で包んで圧搾する方法・・・だけど、小田商店にその設備がありません。濃口醤油などで使う圧搾機が使われています。「えっ!これで搾るんですか・・・?」「溜で溶かすんですよ。」

圧搾された溜を半分に分けて、一方はビンにつめて商品に。もう一方は5水仕込みの諸味(味噌)を溶かすために使う。当然、水分を含んだ諸味になるので圧搾できる。そこで搾られたものをまた半分に分けて・・・の繰り返し。つまり、一度の圧搾で搾れる量の半分しか商品にできないわけです。仕込み水の少ない濃口醤油が搾りにくいので、醤油でのばすという話は聞いたことがありますが、溜で全量この方法でしているとは・・・桶の形に続いての驚き2つ目でした。

小田商店(愛知県豊橋市)その1

小田商店

愛知県豊橋市にある超ローカルスーパー「一期家一笑」。彩り鮮やかなお総菜やこだわりの品々が並ぶ店内。それらを手掛ける杉浦さんに会いにいったところ、「近くにすごい味噌屋さんがあるから・・」と、ご案内いただいたのは車で数分の場所にある小田商店さん。愛知県でお馴染みの溜醤油といえば、武豊町などが産地としては有名ですが、ここにもありました!しかも桶仕込み。ただ、桶の形がいつも見ているものとちょっと違うのです・・・

いつも見慣れている桶をひっくり返したような形。上が狭くて、下が広い。見れば見るほど違和感漂うそのシルエット・・・なぜ、このような形なのか?小田さんが解説してくれました。味噌は1.2年から1.5年ほど熟成させますが、上部の空気に触れ続けている部分は白カビなどが発生している箇所があるので切って捨ててしまう。だから、上の部分の面積が少ないほど捨てる量が少なくなる・・・たしかに味噌づくりには合理的だと納得。

南蔵商店(愛知県武豊町)/追うことはしない



グルテンフリー。小麦グルテンを含んでいない食品という意味で、海外ではそれを示すマークがついていたりするのですが、その意味で溜醤油はうってつけ。海外からの引き合いも多いらしい。「グルテンフリーということで注目されることもあるけど、ぼくらは変わっているという認識はない。」昔から変わらず続けてきたものがたまたま合致した。ただ、それだけの話。市場を追ってしまうとどこかで失敗してしまう気がする。このスタンスは守っていきたい。

南蔵商店
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南蔵商店(愛知県武豊町)/本当に高いか分からんよ

南蔵商店

手掛ける溜醤油は大きく2種類。仕込み水の量が50%の「五水」と、100%の「十水(とみず)」。一般的な醤油と比べると仕込み水の量が少ない。だから、うま味が凝縮されるけど、製造コストは高くなる。過去には泥棒が盗んでいくこともあったとか。ある時、佃煮屋さんに持っていくと醤油にかける価格は2倍になったとか。けど、全体のコストは安くなったという。酒やみりんなどの他の調味料が少なく済みよく伸びるというわけ。

南蔵商店
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南蔵商店(愛知県武豊町)/大切なのは香り

南蔵商店

温かい栗の香りに包まれているような心地よさ。一番驚いたのがこの室の中の香り。「3代目のときから科学的なデータをとるようになってきました。良い時になぜ良いのか?先代からも麹と蔵の中の香りに注意しろよとしきりに言われてきました。」温度管理が一番大切でしっかりと乳酸菌を育ててあげる。先代は最高の麹をつくりたいと口にしながら、味噌玉を割った時の感覚と香りを注意深く確認していたといいます。

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南蔵商店(愛知県武豊町)/絶妙な二人

南蔵商店

商品を絞り込むこと。これがなかなか難しい。長い歴史があれば、いろいろな事情がある。出荷量は少ないけど馴染みのお客さんがいるから。と、こんな例は実際多い。「あれつくれ!」「もっと安いのつくれ!」と、たくさんの声が寄せられていたと思う。でも、それに応えてくと、そっちしか売れなくなってしまう気がして・・・奥様は明るくてよく笑う。ご主人は少し寡黙な職人気質。価値あるものをつくっているという自信があるから頑張れる。

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ミツル醤油さんとヤマロク醤油さん

ミツル醤油とヤマロク醤油

同じつくり手でもアプローチの仕方が違うもの。個性の違いといえばその通りだけど、例えばこの二人。ミツル醤油の城さんは東京農業大学の醸造学科出身で、学生の時から全国の蔵元に修業にでかけるほど。醸造の知識は理論と実地含めて相当すごくて、どんな質問をぶつけても大抵は返ってくる。今年も桶によって種麹を2種類使い分けて、どのような変化になるか試しているらしい。ここまで研究熱心なつくり手はそうそういない。

一方、ヤマロク醤油の山本さんは佃煮メーカーの営業マンを経て醤油づくりの道に。目の前の醤油の状況に先入観なしにいろいろ試してみる。業界の常識からすると思いつかないようなことも、結果としてよい方法だったりする。二人に共通するのはあくなき挑戦を積み重ねているということ。年齢差とかも関係なしに、この二人がガチンコで意見をぶつけ合っている。見ていてハラハラするけど本当に気持ちがいい。