小田商店(愛知県豊橋市)その2

小田商店

小田商店の溜は5水仕込みと10水仕込み。麹の量に対して50%量の塩水で仕込むのが5水。(一般的な濃口醤油は12水〜13水程度)すると搾る工程が異なります。武豊町など溜の産地で一般的なのは、味噌に近い諸味を切って布で包んで圧搾する方法・・・だけど、小田商店にその設備がありません。濃口醤油などで使う圧搾機が使われています。「えっ!これで搾るんですか・・・?」「溜で溶かすんですよ。」

圧搾された溜を半分に分けて、一方はビンにつめて商品に。もう一方は5水仕込みの諸味(味噌)を溶かすために使う。当然、水分を含んだ諸味になるので圧搾できる。そこで搾られたものをまた半分に分けて・・・の繰り返し。つまり、一度の圧搾で搾れる量の半分しか商品にできないわけです。仕込み水の少ない濃口醤油が搾りにくいので、醤油でのばすという話は聞いたことがありますが、溜で全量この方法でしているとは・・・桶の形に続いての驚き2つ目でした。

小田商店(愛知県豊橋市)その1

小田商店

愛知県豊橋市にある超ローカルスーパー「一期家一笑」。彩り鮮やかなお総菜やこだわりの品々が並ぶ店内。それらを手掛ける杉浦さんに会いにいったところ、「近くにすごい味噌屋さんがあるから・・」と、ご案内いただいたのは車で数分の場所にある小田商店さん。愛知県でお馴染みの溜醤油といえば、武豊町などが産地としては有名ですが、ここにもありました!しかも桶仕込み。ただ、桶の形がいつも見ているものとちょっと違うのです・・・

いつも見慣れている桶をひっくり返したような形。上が狭くて、下が広い。見れば見るほど違和感漂うそのシルエット・・・なぜ、このような形なのか?小田さんが解説してくれました。味噌は1.2年から1.5年ほど熟成させますが、上部の空気に触れ続けている部分は白カビなどが発生している箇所があるので切って捨ててしまう。だから、上の部分の面積が少ないほど捨てる量が少なくなる・・・たしかに味噌づくりには合理的だと納得。

南蔵商店(愛知県武豊町)/追うことはしない



グルテンフリー。小麦グルテンを含んでいない食品という意味で、海外ではそれを示すマークがついていたりするのですが、その意味で溜醤油はうってつけ。海外からの引き合いも多いらしい。「グルテンフリーということで注目されることもあるけど、ぼくらは変わっているという認識はない。」昔から変わらず続けてきたものがたまたま合致した。ただ、それだけの話。市場を追ってしまうとどこかで失敗してしまう気がする。このスタンスは守っていきたい。

南蔵商店
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南蔵商店(愛知県武豊町)/本当に高いか分からんよ

南蔵商店

手掛ける溜醤油は大きく2種類。仕込み水の量が50%の「五水」と、100%の「十水(とみず)」。一般的な醤油と比べると仕込み水の量が少ない。だから、うま味が凝縮されるけど、製造コストは高くなる。過去には泥棒が盗んでいくこともあったとか。ある時、佃煮屋さんに持っていくと醤油にかける価格は2倍になったとか。けど、全体のコストは安くなったという。酒やみりんなどの他の調味料が少なく済みよく伸びるというわけ。

南蔵商店
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南蔵商店(愛知県武豊町)/大切なのは香り

南蔵商店

温かい栗の香りに包まれているような心地よさ。一番驚いたのがこの室の中の香り。「3代目のときから科学的なデータをとるようになってきました。良い時になぜ良いのか?先代からも麹と蔵の中の香りに注意しろよとしきりに言われてきました。」温度管理が一番大切でしっかりと乳酸菌を育ててあげる。先代は最高の麹をつくりたいと口にしながら、味噌玉を割った時の感覚と香りを注意深く確認していたといいます。

南蔵商店
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南蔵商店(愛知県武豊町)/絶妙な二人

南蔵商店

商品を絞り込むこと。これがなかなか難しい。長い歴史があれば、いろいろな事情がある。出荷量は少ないけど馴染みのお客さんがいるから。と、こんな例は実際多い。「あれつくれ!」「もっと安いのつくれ!」と、たくさんの声が寄せられていたと思う。でも、それに応えてくと、そっちしか売れなくなってしまう気がして・・・奥様は明るくてよく笑う。ご主人は少し寡黙な職人気質。価値あるものをつくっているという自信があるから頑張れる。

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石孫本店が昔ながらを保てている理由 その4

石孫本店

10年少し前の雑誌の取材。これが転機だったそうです。それまでは、「人が担いで運ぶのではなくて、機械の力で送れたらいいね。早くそんな風にしたいねって、よく話していたんですよ。」と、昔ながらの道具に囲まれていることに卑屈にも感じていたとか・・・ところが、全国を渡り歩いていたその雑誌のライターさんとカメラマンさんが、「こんな光景は見たことがない。絶対に残すべきだ!」と必死に訴えてくれたそうなのです。

「私たちにとっては目からうろこ。自分たちを否定しなくていいんだ。このままでいいんだって、頭の中を切り替えることができたのです。」当時使っていた原料も中国産から国産に切り替えて、建物や道具の修繕をはじめたそうです。「毎年少しづつですけど。ただ、今では守ることが大切な仕事の一つになっているんです。」大切に使う以上に、使われ続けている状態で残すんだという意志がこもっているような、そんな感じがするのです。

石孫本店が昔ながらを保てている理由 その3

石孫本店

写真の箱を通して小麦が炒り機に送られます。「これもずいぶん年季が入っているでしょ!」「いや〜すごいですねぇ!初めて見ました。」これまでに、そんな会話を何度繰り返したことか・・・そして、麦を炒るのは石炭。他の業界含めて石炭を使っているなんてとても稀。使う人が少ないものを調達するのは大変なはずなのに、いたって普通に使われています。また、麹を繁殖させる室の温度調節も、木炭で熱して窓を開けて冷ますシンプルな仕組み。

「木炭の熱と光が柔らかくていいんですよねぇ〜!ここで火を付けて藁をかぶせて室に運ぶんですよ。」と身振り手振りで説明してくれる。「この木炭を焼いてくださる方がいるんです。」結構なご高齢な方のようで、最近は全量が間に合わないからちょっと待っててと分割で納めてくれているらしい。もっと安い木炭はいくらでもあるはずですが、石孫本店さんの答えは、「せっかく焼いてくださるから、その方にお願いできるうちはお願いしようと思っているんです。」

石孫本店が昔ながらを保てている理由 その4

石孫本店が昔ながらを保てている理由 その2

石孫本店

生産の規模が大きくなるほど分業化していくもの。ただ、機械がない石孫本店にとっては自分の関わりが品質に直接影響して、それを実感するそうです。例えば小さな失敗があったとすると、「ほらみろ!だから・・・あそこが・・・お前が・・・」スタッフの方同志であれこれ話し合っているそうです。はたまた、休憩時間にスタッフがそら豆で味噌を仕込んでいたり、ストーブに鍋がかかっていて何かがつくられていたり・・・これが日常なんだそうです。

こんな積み重ねが、「自分が醤油や味噌づくりにどう関わるのが良いのか?」を考えて実感するきっかけになっているのだと思います。仕込み場は徹底的に清潔にした方がいいことを感じているから、自然とそうなっている気がします。「掃除をしっかり!」というやらされ感では決してできない環境だと思うのです。しかも、高圧洗浄機などは使わずに雑巾がけ。そして、あくまでどんな風に掃除してとは指示しないそうで、自分たちで相談してやっているそうです。

石孫本店が昔ながらを保てている理由 その3

石孫本店が昔ながらを保てている理由 その1

石孫本店

「スタッフに20代が二人もいるんですよ!」と嬉しそうに話してくださる石川社長。ここ石孫本店は醤油と味噌の蔵元として「昔ながら」という言葉がぴったり。同業者が訪れても「よく今だにこんな造りをしているものだ・・・」と舌を巻くほど。麹づくりを麹蓋で行っているところは全国で数件しかないし、小麦を石炭で炒っているのもほとんど聞いたことがありません。ただ、古い蔵にありがちな嫌な匂いなども全くなく、とっても綺麗なのです。

スタッフの方に対して、具体的な指示は出さないそうです。むしろ、「仕込はいつからするの?」と石川社長が聞くくらいだそうで、「資材が少ないので発注しておいてください!」と言われて発注する。「これが私の仕事なんです!」と、これまた嬉しそうに語ってくれる。「仕事をすることは生活の糧だけど、喜びの心がないといけない。そうしないと寂しいでしょ?!」決してうわべで語っていない。優しさと意志を話しているとヒシヒシと感じてしまうのです・・・つづく

石孫本店が昔ながらを保てている理由 その2