石孫本店が昔ながらを保てている理由 その3

石孫本店

写真の箱を通して小麦が炒り機に送られます。「これもずいぶん年季が入っているでしょ!」「いや〜すごいですねぇ!初めて見ました。」これまでに、そんな会話を何度繰り返したことか・・・そして、麦を炒るのは石炭。他の業界含めて石炭を使っているなんてとても稀。使う人が少ないものを調達するのは大変なはずなのに、いたって普通に使われています。また、麹を繁殖させる室の温度調節も、木炭で熱して窓を開けて冷ますシンプルな仕組み。

「木炭の熱と光が柔らかくていいんですよねぇ〜!ここで火を付けて藁をかぶせて室に運ぶんですよ。」と身振り手振りで説明してくれる。「この木炭を焼いてくださる方がいるんです。」結構なご高齢な方のようで、最近は全量が間に合わないからちょっと待っててと分割で納めてくれているらしい。もっと安い木炭はいくらでもあるはずですが、石孫本店さんの答えは、「せっかく焼いてくださるから、その方にお願いできるうちはお願いしようと思っているんです。」

石孫本店が昔ながらを保てている理由 その4

石孫本店が昔ながらを保てている理由 その2

石孫本店

生産の規模が大きくなるほど分業化していくもの。ただ、機械がない石孫本店にとっては自分の関わりが品質に直接影響して、それを実感するそうです。例えば小さな失敗があったとすると、「ほらみろ!だから・・・あそこが・・・お前が・・・」スタッフの方同志であれこれ話し合っているそうです。はたまた、休憩時間にスタッフがそら豆で味噌を仕込んでいたり、ストーブに鍋がかかっていて何かがつくられていたり・・・これが日常なんだそうです。

こんな積み重ねが、「自分が醤油や味噌づくりにどう関わるのが良いのか?」を考えて実感するきっかけになっているのだと思います。仕込み場は徹底的に清潔にした方がいいことを感じているから、自然とそうなっている気がします。「掃除をしっかり!」というやらされ感では決してできない環境だと思うのです。しかも、高圧洗浄機などは使わずに雑巾がけ。そして、あくまでどんな風に掃除してとは指示しないそうで、自分たちで相談してやっているそうです。

石孫本店が昔ながらを保てている理由 その3

石孫本店が昔ながらを保てている理由 その1

石孫本店

「スタッフに20代が二人もいるんですよ!」と嬉しそうに話してくださる石川社長。ここ石孫本店は醤油と味噌の蔵元として「昔ながら」という言葉がぴったり。同業者が訪れても「よく今だにこんな造りをしているものだ・・・」と舌を巻くほど。麹づくりを麹蓋で行っているところは全国で数件しかないし、小麦を石炭で炒っているのもほとんど聞いたことがありません。ただ、古い蔵にありがちな嫌な匂いなども全くなく、とっても綺麗なのです。

スタッフの方に対して、具体的な指示は出さないそうです。むしろ、「仕込はいつからするの?」と石川社長が聞くくらいだそうで、「資材が少ないので発注しておいてください!」と言われて発注する。「これが私の仕事なんです!」と、これまた嬉しそうに語ってくれる。「仕事をすることは生活の糧だけど、喜びの心がないといけない。そうしないと寂しいでしょ?!」決してうわべで語っていない。優しさと意志を話しているとヒシヒシと感じてしまうのです・・・つづく

石孫本店が昔ながらを保てている理由 その2

新潟県醤油協業組合(新潟県長岡市)

新潟

2月20日の新潟は雪に覆われ、歩いている人はまばら。車での移動をあきらめ電車に頼ったのですが、駅から目的地まで2キロの道のりにやけに長く感じました・・・きっかけは酒屋平成堂の坂井店長からお問い合わせ。この地でディスカウントストアからの転換を遂げ、品揃えと接客のこだわり度はすごいものがあります。

酒屋平成堂

新潟県といえば日本酒で有名ですが、各蔵元から直接商品を仕入れて、時には商品開発にまで意見をし、興味をもったお客様がいれば一人でも見学に連れて行ってしまう程。商品ひとつひとつに手作りのポップが付けられているので、思わず読み込んでしまう。ワンカップのコーナーもこの通り。

新潟県醤油協業組合

その坂井店長に新潟県醤油協業組合を案内いただきました。到着すると山工場長、佐田さん、堀さんに出迎えをいただき醤油談義と工場見学。芸術的に上手な説明をされる佐田さんに先導されて中を見せていただくと、驚くほど綺麗。ちょうど出麹を終えて清掃作業中だったのですが、傍からみて分かるほどスタッフの方が丁寧に掃除をされていました。

「当たり前のことですが、醤油づくりにおいて人ができることはほとんどないと思っています。微生物が動きやすい環境をつくる手助けをするだけ。」と山工場長は説明してくださいました。それにしても綺麗な工場でした!

新潟県醤油協業組合

このタンクはプラスチック製。7000キロリットルの容量で、陸上輸送できるギリギリの大きさなんだそうです。

新潟県醤油協業組合

「それにしても佐田さんの説明は上手ですね!」と見学終了後に伝えると、「ただ、最近は他のスタッフに工場見学を任せるようにしているんです。」とのこと。ある時、スタッフの一人が「入社3年目にして初めてここに入りました。」という声に驚いたんです。自分たちが当たり前だと思っていたことが当たり前ではなかったんですよね。

「すぐにスタッフ集めて独自に醤油検定をつくることにしました。検定をつくるには自分たちが醤油のことを知らなくてはいけないでしょ。もうすぐ完成するんですよ!」と佐田さんは楽しそう。さらに、「自分たちは協業組合なので自分たちの名前が商品にでることは少ないのです。スタッフの皆に自分たちのつくっているものに誇りを持ってもらいたい。だから工場見学もどんどん受け入れて、消費者の方の反応を直に感じてもらいたいと思っているんです。」

とても魅力的な方たちとの出会い。雪の新潟に来て本当によかったと思いました。

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その日のうちに堀さんからメールをいただきました。「その後、皆で話し合って、あの時話していた事、さっそく導入することにしました!」醤油談義をしていた時に盛り上がった、どうしたら面白い工場見学ができるかのアイデアだったのですが、この意思決定の早さに、またまた驚きました。

醤油でお遊び!(森田醤油)

森田醤油

1月下旬に島根県の森田醤油さんを訪問。「雪すごいよ!ノーマルタイヤ?!危ないよぉ〜!」と念入りにおどされたので、チェーンを購入して準備万端・・・が、幸運にも快晴。「一昨日までだったら絶対に無理!こんなに雪が積もっていたんだから!」と、ぎりぎりのところでチェーンは活躍の場を失いました。

久々に再会に、「こんなお遊びをしていて・・・」と次々と醤油の味見。こだわりの大豆の醤油や醤油麹、ドレッシングなどなど。商品化していないものがほとんど。「実は、つくるのにすごい手間。注文がくると困っちゃう。だからお遊び。」今季の仕込みは50回超、これはすごい数字なんです。1回の仕込みに約3日。その間は室のファンの音が聞こえる部屋に一人布団を持ってきて世話をする。当然、一晩ぐっすり熟睡なんてできないわけです。

それでも「醤油での遊び」をやめない森田さん。今春に息子さんが農大を卒業されることを楽しそうに語っていました。

かける淡口醤油(末廣醤油)

淡紫

先日、兵庫県の末廣醤油さんに立ち寄りました。新しい試行錯誤をたくさんされていましたが、中でも惹きつけられたのが新商品の「淡紫(うすむらさき)」です。淡口醤油というと一般的には野菜の煮物やお吸い物など、色を付けたくない調理に薦められます。一方で、美味しい豆腐や白身のお刺身など、塩やレモンをかけて素材の味を楽しみたいような素材に淡口醤油を使うことはアリだと思っています。

この「淡紫(うすむらさき)」が、そんなかけて使う淡口醤油ということで、「あ〜!それはいいです!」となったわけです。ちょっと無理をいって職人醤油シリーズに加えていただけるようにお願いしてきましたので近日登場予定です!久々に伺うと新しい何かがある。元気のいい蔵の特徴だと思います。

ミツル醤油 初搾り(1)造り手には当たり前のこと

諸味ホース

福岡県のミツル醤油。2年前に城さんが初めて仕込んだ醤油の初搾りを迎えました。広島の岡本醤油さんも助っ人として駆けつけ、楽しい雰囲気の中でも、どういった手順で誰が何を担当して・・・という話し合いが尽きません。なにしろ初めての設備で効率的な作業手順をつくっていかなくてはいけないので、様々なアイデアが激しく交錯していました。

この2泊3日の搾り。単なる蔵見学では感じることができない側面を目の当たりにしました。印象的だったことを一つ。写真は搾る前の諸味(もろみ/水っぽい味噌のような状態)を搾り場に送るホースですが、使い終わった後のこのホース、どうすると思いますか?もちろん綺麗に洗浄するのですが、水で洗い始めないのです。

ホースの中に残っている諸味を綺麗に取り出すため、予め搾っておいた醤油で洗い出します。その後で水洗いするのです。一滴足りとも無駄にしない姿勢。造り手にとっては当たり前のことなんですね。

店舗リニューアルと工場見学(岡直三郎商店)

岡直三郎商店

群馬県大間々市にある岡直三郎商店。元々蔵に併設されていた店舗はあったのですが、事務所と店舗スペースのリニューアルしてこのような空間に早変わり。既存の建物を活かして開放的でお洒落な空間に。ライトの使い方も上手で羨ましいと感じるくらい。

もう一つの特徴が工場見学。大桶の中に入っている諸味の様子も間近にみることができて、スタッフの方による解説付き。定期的に出発する集合時間を待って多くの人が列をなしていました。

ほとんどの方が醤油蔵の見学は初めてだと思います。薄暗い蔵の中に入る時の感覚はとても新鮮でワクワクするもののはず。その感覚とお土産に買った醤油がセットになった時、家族や友人に話をするときの臨場感が明らかに違うと思うのです。何年たっても醤油を使うたびに思い出されるはずで、この感覚が重要だと思うのです。工場見学は造り手の立場からすると、とても手間のかかること。ただ、こだわりの品をつくる造り手だからこそ、注力していくべきことだと感じています。

山形県の庄司久仁蔵商店さん

山形県のスーパーに行くと丸十大屋さんの「味マルジュウ」を筆頭にだし醤油がずらりと並んでいます。だしが入っていないタイプの醤油だと濃口醤油の混合タイプが多いのですが、九州や北陸地方のような甘みのあるものではなく、丸みのある味付け。



そして、山形県の庄司久仁蔵商店さんを訪問。
庄司さんは「山形は5年遅れているんだ!」と冗談めいて話してくれました。サラリーマン生活から実家に戻ってきたのが2000年。バブルが崩壊したといわれた時にも大きな実感はなかったといい、この2000年くらいになってじわじわとその実感がやってきたといいます。



それまでは地元の酒販店などに卸していたものが、立て続けに廃業かコンビニに業態転換していったので、売り先がどんどんなくなる・・・今では軽トラに醤油を積んで個別配送をしているそうです。この直販体制は九州ではまだまだみられるスタイル。

ちょうど今頃のお盆の時期がお中元の時期だそうで、年末も30日まで忙しく働いているそうです。「こっち(山形)は都会から人が帰ってくる側だから、年末のギリギリまで慌ただしいんですよ!」



(おまけ)山形県でインターネットラジオの「radiko」のアプリを開いてみるとこんな状態に。。。

福島県の若喜商店さんに訪問

若喜商店

福島県の若喜商店さんに訪問。福島県内で木桶で仕込みを続けている数少ない醤油蔵です。

震災前後で変わったという話。若喜商店さんは喜多方市にあります。ラーメンで有名なこの土地は、以前はだまっていても観光客で賑わっていたのですが、震災をきっかけに観光客が激減。観光客が来るものという当たり前という前提がなくなってしまったので、色々考えるようになったといいます。

地域の仲間で集まって話し合いの機会も増えたといい、情報の発信だったり自分たちが積極的に出て行く事もしていかないといけない。今まで敬遠しがちだったインターネットも模索していかないといけないと感じたそうです。環境が変わって考えと行動が変わってくる。そんなときに一緒になって動ける存在に、成果につながる仕組みづくりができる組織になっていたいなと改めて思うのです。

お昼は教えていただいた「まこと食堂」に。比較をしないと分からないので結構頑張ってもう一軒のラーメン屋さんにも。「まこと食堂」また行きたいです。喜多方ラーメンうまし!